
ふとした瞬間に手首を壁やドアノブにぶつけてしまい、恐る恐る確認すると大切なアップルウォッチの画面に傷が入っていたときの絶望感は計り知れません。
すぐに頭をよぎるのは修理代のことですが、実際に調べてみると予想以上に高額な費用に驚愕し、どうすれば良いのか途方に暮れてしまう方も多いのではないでしょうか。
私たちが日常的に検索するアップルウォッチの画面の傷に関する修理代や傷消しの方法、あるいは研磨による修復の可否やコーティングの効果、さらには下取りや買取の可能性まで、あらゆる情報を網羅的に整理する必要があります。
高額な修理費用を支払って直すのが正解なのか、それとも傷を目立たなくするフィルムで凌ぐべきなのか、あるいは思い切って売却してしまうのが賢い選択なのか、経済的な損得勘定も含めて冷静に判断することが大切です。
この記事では、画面に傷がついたアップルウォッチへの対処法について、修理コストの現実から驚きの代替案までを徹底的に解説します。
- AppleCare未加入時における具体的な修理費用の相場と構造
- 酸化セリウムや歯磨き粉を使ったDIYでの傷消しに潜む重大なリスク
- 高額な修理を回避して傷を目立たなくするUVフィルムなどの最新技術
- 画面が割れた状態でも高値で売却して買い替えるための市場活用術
アップルウォッチの画面の傷と修理代の厳しい現実

まずは、私たちが直面している問題の大きさ、つまり「お金」の話から逃げずに確認していきましょう。アップルウォッチは非常に精密なデバイスであるがゆえに、一度壊れてしまうと、その修復には驚くほどのコストがかかります。
ここでは、正規ルートでの修理費用がなぜこれほど高いのか、そして「自分でなんとか安く直せないか」という淡い期待が、技術的にどれほどハードルの高いものであるかを、客観的な事実に基づいて深掘りしていきます。
AppleCare未加入時の修理料金の目安
正直なところ、AppleCare+に加入していない状態でアップルウォッチの画面を割ってしまった場合、提示される修理見積もりを見て膝から崩れ落ちそうになる人は私だけではないはずです。
実は、Appleの正規サービスプロバイダにおける「修理」は、私たちがイメージするような「割れたガラスだけを張り替える」という作業ではありません。
アップルウォッチはその高い防水性能と密閉構造を維持するため、店舗レベルでの分解修理が非常に困難な設計になっています。そのため、保証対象外の修理のほとんどは、実質的に「本体ごとの交換(ユニット交換)」となるのです。
これが何を意味するかというと、修理代金が「新品を買うのとあまり変わらない金額」にまで跳ね上がるということです。モデルやシリーズにもよりますが、修理費用は新品購入価格の50%から、場合によっては80%近くに達することさえあります。
| モデル(例) | 新品価格目安 | 修理費用目安(未加入) | 対新品価格比 |
|---|---|---|---|
| Apple Watch SE (第2世代) | 約34,800円〜 | 約28,000円〜 | 約80% |
| Apple Watch Series 9 | 約59,800円〜 | 約45,000円〜 | 約75% |
| Apple Watch Ultra 2 | 約128,800円〜 | 約75,000円〜 | 約58% |
上記の表を見ていただければ分かる通り、特にSEなどのエントリーモデルでは、修理するよりも数千円追加して新品を買ったほうが良いという逆転現象に近い状態が起きています。これが「修理代が高い」と検索してしまう最大の理由でしょう。
ここがポイント
AppleCare+に加入していれば、画面損傷は「過失」として数千円(例:3,700円程度)の免責金額で交換可能です。しかし、未加入の場合は数万円の出費を覚悟しなければなりません。
画面の傷消しや研磨は自分でできるか
高額な修理代を目の当たりにすると、次に私たちが考えるのは「自分でなんとか傷を消せないか?」というDIYへの道です。YouTubeやブログでは、様々な研磨剤を使って傷を消そうとするチャレンジャーたちの姿を見ることができます。
しかし、結論から言うと、一般ユーザーがアップルウォッチの画面を研磨して元通りにすることは、極めて困難であり、推奨できません。その理由は、アップルウォッチに使われているガラス素材の特性にあります。
アップルウォッチには、モデルによって主に2種類のガラスが使われています。
- Ion-Xガラス(強化ガラス): アルミニウムモデルに採用。軽くて割れにくいですが、擦り傷にはそこまで強くありません(モース硬度6〜7程度)。
- サファイアクリスタル: ステンレスやチタン、Ultraモデルに採用。非常に硬く(モース硬度9)、傷がつきにくいですが、一度ついた傷を削るのも至難の業です。
Ion-Xガラスであれば、理論上は研磨剤で削ることが可能ですが、サファイアクリスタルに至っては、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持っているため、普通の研磨剤では歯が立ちません。素材に合わない方法を試しても、徒労に終わるどころか、状況を悪化させるだけなのです。
酸化セリウムで傷を消す方法と危険性
「アップルウォッチ 傷消し」などで検索すると、必ずと言っていいほど出てくるキーワードが「酸化セリウム」です。これはガラス用の研磨剤として工業的にも使われている成分で、化学的・機械的研磨(CMP)という作用でガラス表面を滑らかにします。
確かに、アルミニウムモデルのIon-Xガラスに対しては、酸化セリウムを使えば微細なヘアラインスクラッチ(浅い線傷)を薄くすることは物理的に可能です。しかし、これをアップルウォッチに適用することには、メリットを遥かに上回る巨大なリスクが潜んでいます。
酸化セリウム研磨の重大リスク
- コーティングの完全剥離: ガラス表面には、指紋をつきにくくし、指の滑りを良くするための「耐指紋性撥油コーティング」が施されています。研磨を行うと、このコーティングは100%削り取られます。結果、画面は指紋でベタベタになり、タッチ操作の感触が劇的に悪化します。
- 水没による故障: 酸化セリウムは水で溶いてペースト状にして使います。研磨中にこの液体がマイク穴やスピーカー、デジタルクラウンの隙間から浸入し、内部基板を腐食させる「水没」のリスクが極めて高いです。
- 画面の歪み: 手作業で傷の深さまでガラス全体を均一に削ることは不可能です。傷の部分だけを集中して磨くと、そこだけレンズのように凹んでしまい、表示が波打って見えるようになります。
「傷は消えたけど、指紋が取れなくなって、しかも数日後に電源が入らなくなった」という最悪の結末を迎える可能性が高いのが、この方法なのです。
歯磨き粉での対処に効果はあるのか
もっと身近なアイテムとして「歯磨き粉で磨くと傷が消える」という噂もよく耳にします。これは昔からあるライフハックの一つですが、現代のスマートデバイス、特にアップルウォッチにおいては「ほぼ効果なし」と考えて間違いありません。
歯磨き粉に含まれる研磨剤は、歯のエナメル質の汚れを落とすためのものであり、強化ガラスやサファイアクリスタルを削れるほどの硬度も粒子サイズも持っていません。一生懸命こすったとしても、ガラスの傷は消えず、逆に先ほど説明した「撥油コーティング」だけを無意味に痛めつける結果になります。
もし「歯磨き粉で傷が消えた!」という報告があるとしたら、それは傷が消えたのではなく、歯磨き粉の成分が傷の溝に詰まって一時的に見えにくくなっているか、あるいはコーティング層についた浅い汚れが落ちただけである可能性が高いです。リスクを冒してまで試す価値は低いと言えるでしょう。
画面割れを放置するリスクと操作性
「修理代も高いし、DIYも危険。なら、このまま使い続けよう」と考える方もいるでしょう。傷が浅い擦り傷程度なら、見た目の問題さえ我慢すればそのまま使い続けることも一つの正解です。
しかし、爪が引っかかるような深い傷や、画面にヒビが入っている「割れ」の状態であれば、話は別です。これを放置することには、機能面と安全面で大きなリスクが伴います。
画面割れ放置の3大リスク
- 防水性の喪失: これが最も致命的です。ガラスに入った亀裂からは、手洗いの水しぶきや汗が容易に内部へ侵入します。今は動いていても、内部では腐食が進行し、ある日突然ブラックアウトして文鎮化します。
- タッチ操作の不具合: 割れた部分のタッチセンサーが反応しなくなったり、逆に触れていないのに勝手に反応する「ゴーストタッチ」が発生したりします。パスコードが勝手に入力されてロックがかかってしまうと、初期化が必要になることもあります。
- 怪我の危険: 割れたガラス片は鋭利です。スワイプ操作をするたびに指先を傷つける可能性がありますし、寝ている間に顔や体を傷つけてしまう恐れもあります。
特に防水性の喪失は、時計という性質上、致命的な問題です。「まだ使えるから」と放置していると、修理ではなく買い替えしか選択肢がなくなる日まで、カウントダウンが進んでいくことになります。
アップルウォッチの画面の傷の修理代を抑える代替案

ここまで厳しい現実ばかりをお伝えしてきましたが、ここからは解決編です。真正面から高い修理代を払うだけが能ではありません。「直す」のではなく「隠す」、あるいは「資産価値を活かす」という視点に切り替えることで、経済的なダメージを最小限に抑える賢い方法が存在します。
修理より安いUVフィルムで傷を隠す
もしあなたのアップルウォッチの傷が「割れ」ではなく「深い線傷」や「擦り傷」レベルなら、最もコストパフォーマンスが良い解決策は、物理的に直すことではなく、光学的に「見えなくする」ことです。
通常の保護フィルムを傷の上から貼ると、傷の凹みに空気が入ってしまい(気泡)、余計に傷が目立ってしまうことがあります。しかし、「UV硬化型ガラスフィルム」と呼ばれる特殊な製品を使うと、劇的な効果が得られます。
このタイプのフィルムは、液体状の透明な接着剤(レジン)を画面に垂らし、その上からガラスフィルムを乗せて、最後にUVライト(紫外線)を当てて硬化させる仕組みになっています。
なぜ傷が消えるのか? 液体の接着剤が傷の微細な溝に隅々まで浸透し、その状態で固まるからです。接着剤とガラスの屈折率が近いため、光の乱反射が抑えられ、まるで傷がなかったかのように一体化して見えます。これは「傷を消す」のではなく「埋める」アプローチですが、視覚的な修復効果は絶大です。
数千円で購入でき、リスクも低く、同時に画面保護もできるため、最もおすすめできる対処法です。
コーティングで新たな傷を防止する
「UVフィルムを貼るほどではないけれど、細かい傷が気になるし、これ以上増やしたくない」という方には、「スマホコーティング(ガラスコーティング)」が有効です。
専門店やDIYキットで行うガラスコーティングは、ナノレベルのガラス粒子を表面に塗布し、硬化させる技術です。これにより、以下のようなメリットが期待できます。
- 微細な傷の隠蔽: ナノ粒子が目に見えないレベルの凹凸に入り込み、表面を平滑化することで、光沢感が復活し、小傷が目立たなくなります。
- 操作性の向上: 傷によって失われた滑りの良さを取り戻し、指紋も拭き取りやすくなります。
- 硬度アップ: 一般的に9H程度の硬度を持つ被膜を形成するため、新たな擦り傷に対する防御力が向上します。
すでに深い傷がある場合には効果が限定的ですが、浅い傷のリペアと今後の保護を兼ねて行うには、非常にスマートな選択肢です。
非正規店でのガラス交換と修理費用
「どうしてもガラスを新品にしたいけれど、Appleの正規修理代は高すぎる」という場合、街の修理屋さん(非正規修理店)を利用するという手もあります。
非正規店では、ガラス部分のみの交換や、バッテリー交換とセットでの修理など、柔軟な対応が可能で、費用も正規店の半分程度で済むケースが多いです。例えば、1万円台〜2万円台で画面修理ができることもあります。
非正規修理のデメリット
ただし、安さの代償として以下のリスクを受け入れる必要があります。
- Appleの保証対象外に: 一度でも非正規店で分解されると、その後Appleでの修理やサポートは一切受けられなくなります。
- 防水性能の低下: 多くの非正規修理では、純正同等の完全な密閉防水を再現することは困難です。「生活防水程度」にスペックダウンすると考えた方が安全です。
- 部品の品質: 純正ディスプレイではなく、互換品が使われる場合があり、色味やタッチ感度が純正と異なる可能性があります。
傷があっても下取りや買取に出せるか
ここで発想を転換してみましょう。「修理するのに4万円かかるなら、今の壊れたウォッチを売って、そのお金と修理代を合わせて新しいモデルを買った方が幸せになれるのではないか?」という考え方です。
「え?画面が割れているのに売れるの?」と驚かれるかもしれませんが、実はアップルウォッチは、画面が割れていても、いわゆる「ジャンク品」としての需要が非常に高い製品なのです。
大手キャリアの下取りプログラムでも、画面割れ品には価格がつきます。例えば、NTTドコモの下取り価格(2024年時点などのデータ参照)を見ると、良品と画面割れ品では価格差(減額)がありますが、それでも「0円」にはなりません。数千円〜1万円以上の値がつくことも珍しくありません。
(出典:NTTドコモ『下取りプログラム』)
傷ついた本体を高く売るコツと相場
さらに高く売りたいなら、キャリアの下取りよりも、フリマアプリ(メルカリ、PayPayフリマなど)や、壊れたApple製品専門の買取業者を利用するのがおすすめです。
市場データを見ると、画面がバキバキに割れていても、電源が入り、ペアリング解除(アクティベーションロック解除)ができている状態であれば、以下のような理由で買い手がつき、高値で取引されています。
- 部品取り需要: 画面は死んでいても、中のバッテリー、センサー、基板などの部品は生きているため、修理業者がドナーとして欲しがります。
- 実用重視のユーザー: 「通知さえ来ればいい」「睡眠ログを取りたいだけ」という層が、格安で手に入る端末を探しています。
| 状態 | 売却先の選択肢 | 期待できる価格感 | 手間のレベル |
|---|---|---|---|
| 画面割れ(操作可) | フリマアプリ | 高(市場価格の3〜5割程度) | 中(撮影・梱包が必要) |
| 画面割れ(操作可) | ジャンク買取店 | 中 | 低(送るだけ) |
| 画面割れ(操作可) | キャリア下取り | 低〜中 | 低(機種変時のみ) |
例えば、修理代に3万円かかるとして、壊れた端末が1万5千円で売れれば、実質的な差額はかなり縮まります。修理代を払って「型落ちの修理品」を使い続けるより、その資金を元手に「新品の最新モデル」に乗り換える方が、バッテリーも新品になり、機能も向上するため、満足度が圧倒的に高いケースが多いのです。
高く売るための必須条件
売却する際は、必ずiPhoneのWatchアプリから「ペアリング解除」を行ってください。これにより「探す」機能がオフになり、次の人が使えるようになります。ロックがかかったままだと、ただの文鎮として価値が暴落します。
まとめ:アップルウォッチの画面の傷と修理代の最適解
アップルウォッチの画面に傷がついたとき、高額な修理代に思考停止してはいけません。状況に合わせて、最も経済的合理性の高い選択肢を選びましょう。
- 浅い傷・線傷の場合: 高額修理は不要。「UV硬化型ガラスフィルム」や「コーティング」で傷を隠し、保護して使い続けるのがベスト。DIY研磨はリスクが高すぎるのでNG。
- 深い傷・画面割れの場合: 正規修理代と現在の端末の「ジャンク買取価格」を天秤にかける。多くの場合、修理するよりも「現状で売却」し、修理代として払うはずだったお金を足して「買い替え」をする方が、資産価値的にも機能的にもお得になります。
- どうしてもの場合: 防水性を犠牲にできるなら、非正規店での修理も選択肢ですが、長く使うなら買い替え推奨です。
傷ついてしまったことはショックですが、それをきっかけに新しいモデルへお得にステップアップできるチャンスと捉え直してみてはいかがでしょうか。まずは、自分のウォッチがフリマアプリでいくらで取引されているか、相場をチェックすることから始めてみてください。