
モニターアームを導入するとき、クランプ式の固定方法で本当に大丈夫なのか心配になりますよね。
特に大切なデスクに傷がついたり天板がへこんでしまったりするのは絶対に避けたいところです。ネットで検索していると補強プレートや当て木といった対策アイテムをよく見かけますが、実際に必要なのかどうかも気になります。100均のグッズで代用できるのか、それとも専用の製品を買うべきなのか迷っている方も多いはずです。
クランプがずれることによる転倒事故やガラステーブルへの設置リスクなど、安全面での不安も尽きません。今回は私が実際に調べた内容をもとに、後悔しないための設置ノウハウを共有します。
- デスクの材質や構造によって異なる当て木や補強プレートの必要性
- 安易な100均DIYのリスクと安全に代用するための正しい知識
- モニターアームのクランプがずれる原因と効果的な滑り止め対策
- 市販されているおすすめの補強プレート比較と失敗しない選び方
モニターアームのクランプ設置で当て木が必要な理由

モニターアームはデスク環境を劇的に快適にしてくれる素晴らしいツールですが、その構造上、デスクの一点にものすごい力が加わることになります。私自身、最初は「ただ挟むだけでしょ?」と軽く考えていたのですが、いろいろ調べていくうちに、実はかなり物理的な負荷がかかっていることがわかってきました。ここでは、なぜクランプ設置において「当て木」や「補強」が重要視されるのか、その根本的な理由について、デスクの素材や構造の観点から掘り下げていきたいと思います。
当て木の必要性とデスク保護の効果
まず基本的なところですが、モニターアームのクランプ部分は「テコの原理」の支点になっています。モニター本体が数キログラム、重いものだと10キログラム近くあり、それをアームの長さ分だけ離れた位置で支えるわけですから、根元のクランプ部分には想像以上の「ねじる力(モーメント荷重)」がかかっているんです。
この力が、クランプの小さな金属面に集中します。もし何も保護せずに直接締め付けてしまうと、硬い金属がデスクの天板に食い込み、取り返しのつかない傷をつけてしまう可能性があります。ここで言う「当て木」の役割は、単に表面の擦り傷を防ぐだけではありません。
最も重要な役割は、「力を分散させること」にあります。点や線でかかっている強烈な圧力を、当て木やプレートを挟むことで「面」で受け止め、広い範囲に逃がしてあげるわけです。
これにより、デスクの一か所だけが凹んだり、塗装が割れたりするリスクを大幅に減らすことができます。特に、将来的にモニターアームを外したときや位置を変えたときに、デスクに「クランプの跡」がくっきり残っているとかなりショックですよね。資産価値を守るという意味でも、当て木は非常に有効な保険と言えるでしょう。
中空構造デスクの陥没リスクと対策
最近の安価でおしゃれなデスク、特に北欧系家具などでよく見かけるのが「中空構造(フラッシュ構造・ハニカム構造)」の天板です。これは、木の枠組みの中に紙でできたハニカム(蜂の巣状)コアを詰め、薄い板でサンドイッチした作りになっています。軽くて扱いやすいのがメリットですが、モニターアームのクランプにとってはまさに天敵とも言える相性の悪さです。
中空構造デスクのリスク 表面の板が非常に薄いため、クランプで強く締め付けると、内部の空洞部分が耐え切れずに押しつぶされ、天板が「陥没」してしまう危険性が極めて高いです。
私たちが普段デスクを使うときのように、上から本を置いたりパソコンを置いたりする「面荷重」には強いのですが、クランプのように上下から局所的に挟み込む力にはめっぽう弱いんですね。実際に、「取り付けたときは大丈夫だったけど、数日後に見たらアームが傾いていて、外してみたら天板がベコッと凹んでいた」という失敗談は後を絶ちません。
もしお使いのデスクがこのタイプの場合、対策なしでの取り付けは避けたほうが無難です。どうしても取り付ける場合は、かなり広範囲をカバーできる大型の補強プレートや、厚みのある硬い板を挟んで、荷重をデスク内部の「芯材(フレーム)」部分まで届かせるような工夫が必須になります。ただの薄い当て木程度では、当て木ごと沈み込んでしまう可能性があるので注意が必要です。
ガラステーブルへの設置が危険な理由
これは声を大にして言いたいのですが、ガラステーブルへのクランプ式モニターアームの設置は、基本的に「絶対NG」だと考えてください。たとえ強化ガラスであってもです。
ガラスという素材は、面全体にかかる力にはある程度耐えられますが、「一点にかかる力」や「微細な傷からの亀裂」には非常に脆い性質を持っています。クランプで締め付けるという行為自体が、ガラスに対して常に強いストレス(張力)を与え続けている状態になります。
ガラス破壊の恐怖 強化ガラスは割れるとき、粉々に砕け散る特性があります。モニターアームの重みとクランプの締め付けで限界を超えた瞬間、あるいは調整でアームを動かした瞬間の振動がトリガーとなって、爆発するように天板が崩壊するリスクがあります。
「厚いゴムを挟めば大丈夫じゃないか?」「大きな木の板で挟めばいけるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、リスクが高すぎます。補強したとしても、ガラスそのものの「割れる」というリスクはなくなりません。高価なモニターごと床に落下し、ガラスの破片が飛び散る大惨事を避けるためにも、ガラステーブルの場合は自立式のモニタースタンドを使用するか、別のデスクを用意することを強くおすすめします。
クランプがずれる原因と摩擦の問題
しっかりと締めたはずなのに、アームを動かすとなんだか土台がグラグラする、あるいは気づいたら位置がずれている……そんな経験はありませんか? これは「締め付け不足」というよりは、「摩擦力不足」が原因であることが多いです。
多くのデスク(特にメラミン化粧板など)の表面は、汚れが付きにくいようにツルツルに加工されています。一方で、クランプの金具も金属製で滑りやすい。この「滑りやすいもの同士」を圧着させても、摩擦係数が低いため、横方向の力(アームを左右に振る動作など)が加わると簡単に滑ってしまうのです。
また、木製のデスクや当て木を使っている場合、時間の経過とともに木材がわずかに圧縮されて薄くなる「クリープ現象」が起きることがあります。これにより、当初の締め付け力が弱まり、結果としてズレやすくなることもあります。定期的な「増し締め」が必要なのはこのためですが、最初から「滑りにくい環境」を作ってあげることも重要です。
傷防止のための保護シートの役割
クランプとデスクの間に挟む保護シートについてですが、これには「傷防止」と「滑り止め」の二つの役割があります。しかし、素材選びを間違えると逆効果になることもあるので注意が必要です。
例えば、家にあった適当なスポンジや、厚すぎるゴムシートを挟むのはあまりおすすめできません。柔らかすぎる素材は、クランプの圧力で簡単に潰れて変形してしまいます。すると、モニターアーム全体が前傾してしまったり、変形した隙間から徐々にズレが生じたりして、安定性が損なわれます。
色移りにも注意 一部のゴム製品(特に黒いゴム)に含まれる成分が、デスクの天板塗装と化学反応を起こし、ゴムの色がデスクに移ってしまう「移行(汚染)」という現象が起きることがあります。一度染み込むと拭いても取れないため、デスク保護のために敷いたはずが逆にデスクを汚す結果になりかねません。
理想的なのは、適度な硬さがあり、かつ摩擦力の高い薄手のゴムシートや、EVA素材、あるいは専用の保護パッドです。これらは圧縮されても変形しにくく、長期間安定してデスクを守ってくれます。
モニターアームのクランプに最適な当て木の選び方

ここまで、なぜ当て木や補強が必要なのかを見てきました。では、実際にどのようなものを選べばいいのでしょうか? 「とりあえず何か挟んでおけばいい」と適当な端材を使うのは少々危険です。ここでは、市販されている専用の補強プレートと、DIYで自作する場合のポイントについて、私なりの視点で比較・解説していきます。
おすすめの市販補強プレート比較
一番確実で手っ取り早いのは、やはり各メーカーから出ている「モニターアーム補強プレート」を購入することです。これらは専用設計されているだけあって、剛性(曲がりにくさ)、薄さ、滑り止め性能のバランスが非常に良く作られています。
代表的なメーカーの製品を比較してみましょう。
| メーカー | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| サンワサプライ | 全体的に剛性が高く、サイズ展開も豊富。特に大型のプレートは接地面積が広く、中空構造デスクへの安心感が高い。 | デスクが弱そうで不安な人、安定性を最優先したい人。 |
| エレコム | コスパが良く、入手性が高い。デスクへの傷防止を主眼に置いたバランスの良い設計。3層構造で保護性能が高いモデルも。 | 手軽に導入したい人、デスクを傷つけたくない人。 |
| EAYHMなど | Amazonなどで人気の低価格ブランド。USBポート付きなど機能的な製品もあるが、塗装の質や滑り止めゴムの匂いに個体差がある場合も。 | 機能性を重視する人、予算を抑えたい人。 |
私が個人的に信頼しているのは、やはりオフィス家具大手であるサンワサプライや、周辺機器メーカーのエレコムの製品です。鉄板の厚みもしっかりしており、付属している滑り止めシート(EVAスポンジなど)の品質も安定しています。「たかが鉄板」と思うかもしれませんが、長く使うことを考えると数百円の差で安心感が買えるなら安いものだと思います。
100均での自作と代用における注意点
「できるだけ安く済ませたい」と考えて、100円ショップで使えるものを探す方も多いですよね。私もその気持ちはよく分かります。実際、「モニターアーム 当て木 100均」などで検索すると、MDF材(木の粉を固めた板)やコルクボード、まな板などを使ったDIY事例がたくさん出てきます。
しかし、これには大きな落とし穴があります。100均で売られている木材、特に工作用のMDF材やバルサ材は、密度が低く強度が足りないものが多いのです。クランプで強烈に締め付けると、メリメリと割れてしまったり、湿気で膨らんで強度が落ちたりすることがあります。
段ボールや雑誌は絶対NG たまに「段ボールを畳んで挟む」「要らない雑誌を挟む」という代用案を見かけますが、これは絶対にやめてください。紙素材は時間の経過とともに確実に潰れていきます(クリープ変形)。気づかないうちにクランプが緩み、ある日突然モニターが倒れてくる原因になります。
100均アイテムを活用するなら、「構造材」としてではなく、あくまで「補助材(滑り止めなど)」として使うのが賢い方法です。
DIYに適した木材の種類と厚み
もしホームセンターなどで木材を買ってきて自作する場合は、木の種類選びが非常に重要です。木には大きく分けて「針葉樹」と「広葉樹」がありますが、当て木に適しているのは圧倒的に「広葉樹(ハードウッド)」です。
- 針葉樹(杉、パイン、ヒノキなど): 柔らかく、爪で押すと跡がつくレベル。クランプで締めると簡単に凹んでしまい、結局デスクを守れないことが多いです。
- 広葉樹(ナラ、タモ、オーク、ブナなど): 硬くて密度が高く、簡単には凹みません。家具の脚や床材に使われるような丈夫な木材です。
ホームセンターの端材コーナーに行けば、硬い広葉樹の端切れが安く売られていることがあります。厚みとしては、最低でも1cm以上、できれば1.5cm〜2cm程度あると安心です。ただし、あまり厚すぎるとクランプの挟める幅(有効長)を超えてしまうことがあるので、事前にモニターアームの仕様を確認しておきましょう。
適切なサイズとスチール製プレート
自作の木製当て木と、市販のスチール製プレートの最大の違いは「厚みに対する剛性」です。木材で十分な強度を出そうとするとどうしても厚みが出てしまいますが、スチール(鋼鉄)ならわずか2mm〜3mmの厚さでも強靭な強度を発揮します。
もしクランプの取り付け幅に余裕がない場合や、デスク周りをスマートに見せたい場合は、無理に木材で自作しようとせず、素直に市販のスチール製プレートを選ぶのが正解です。
また、サイズの選び方ですが、基本的には「クランプの台座よりも一回り大きいサイズ」を選ぶのが鉄則です。台座と同じサイズだと、台座の角がプレートからはみ出して結局デスクに食い込んでしまう可能性があります。特にデスク裏面の下部プレートは、クランプのネジ皿よりも十分に大きいものを選び、突き上げによる破損を防ぎましょう。
滑り止め対策と耐震ジェルの活用
最後に、私が試してみて意外と効果が高かったDIYテクニックを紹介します。それは「耐震ジェルマット」の活用です。100均やホームセンターで売っている、家具の転倒防止用の青や透明のジェルです。
これを、当て木(またはプレート)とデスク天板の間に挟みます。耐震ジェルは粘着力が非常に高く、かつ適度な弾力があるため、最強クラスの「滑り止め」として機能します。これを挟むだけで、アームを動かしたときの台座のズレが劇的に改善されました。
ポイント 耐震ジェルは厚みがありすぎると「ムニュッ」と潰れて不安定になるので、できるだけ薄手のもの(3mm程度まで)を選ぶか、潰れにくい高硬度のものを選んでください。また、長期間貼りっぱなしにすると剥がすときに大変なことになる場合があるので、定期的に様子を見ることをおすすめします。
モニターアームのクランプと当て木のまとめ
モニターアームを安全かつ快適に使うためには、デスクの強度に見合った適切な「足場」を整えてあげることが何よりも大切です。たかが当て木、されど当て木。ここで数百円から数千円の投資を惜しんで、数万円のモニターや大切なデスクを台無しにしてしまっては本末転倒です。
中空構造のデスクを使っている方や、安定性に不安がある方は、迷わず剛性の高い市販の補強プレートを導入してください。DIY派の方は、硬い木材と適切な滑り止め素材を組み合わせて、オリジナルの最強の当て木を作ってみるのも楽しいでしょう。この記事が、あなたのデスク環境構築の参考になれば嬉しいです。