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マスカットオブアレキサンドリアとシャインマスカット違いは?味と価格

スーパーやデパートの果物売り場で、美しいエメラルドグリーンのブドウを見かけて足を止めたことはありませんか。宝石のように輝くその姿に魅了されつつも、マスカットオブアレキサンドリアとシャインマスカット違いがよく分からず、どちらを選べばよいのか迷ってしまう方も多いはずです。

値段の差はどこから来るのか、味や香りに決定的な違いはあるのか、そして大切な方への贈り物やギフトとして選ぶならどちらが最適なのか、知りたいことは山ほどありますよね。

皮ごと食べられる手軽さが魅力のシャインマスカットと、果物の女王として君臨し続ける伝統のマスカットオブアレキサンドリア。

それぞれの特徴や旬の時期、そして意外と知られていない種や保存方法に関する知識まで、詳しく紐解いていきましょう。

  • マスカットオブアレキサンドリアとシャインマスカットの決定的な味と香りの違い
  • なぜ値段に差が出るのかという市場価格やブランド価値の裏側
  • 贈答用や自宅用などシーンに合わせた失敗しない選び方の基準
  • 鮮度を長持ちさせるための軸を残す正しい保存テクニック

マスカットオブアレキサンドリアとシャインマスカットの違いを比較

まずは、この二つの品種が根本的にどう違うのか、その核心に迫っていきたいと思います。

見た目はどちらも美しい黄緑色をしていますが、その背後にある歴史や生まれ持った遺伝子、そして私たちが口にしたときに感じる体験は全く別物だと言っても過言ではありません。

「どちらも同じマスカットでしょ?」と思っていると、良い意味で裏切られることになりますよ。

ここでは、産地から味、価格に至るまで、両者の違いを多角的に比較していきます。

産地や歴史などの基本特徴

これら二つのブドウを語る上で、まず押さえておきたいのが「生まれ」の違いです。これが今の味や栽培方法、ひいては価格にまで大きく影響しているからです。

まず、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」ですが、こちらはまさに生ける伝説といえます。その歴史はなんと紀元前の古代エジプトにまで遡り、あのクレオパトラも愛したという伝承が残っているほど。

北アフリカ原産のこの品種は、乾燥した地中海性気候に適応した純粋な「欧州ブドウ(Vitis vinifera)」です。日本には明治時代に入ってきましたが、雨が多く湿気の高い日本の気候では露地栽培が非常に難しく、病気になりやすいという弱点がありました。

そこで日本の農家さんたちが編み出したのが、ガラス温室を使った芸術的な栽培技術です。特に岡山県はこの技術を極め、現在でも生産量の9割以上を占める圧倒的なシェアを誇っています。つまり、アレキサンドリアは日本の職人技によって守られてきた「箱入り娘」のような存在なんですね。

一方で、「シャインマスカット」は、2006年に品種登録されたばかりの、言わば「現代のニュースター」です。こちらは日本の「農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)」が、長い年月をかけて開発した品種です。開発のコンセプトは非常に明確で、「日本の多湿な気候でも育てやすく、病気に強く、そして美味しいマスカットを作ること」でした。

興味深いのは、シャインマスカットの系譜を辿ると、祖父母の代に「マスカット・オブ・アレキサンドリア」がいるということです。つまり、シャインマスカットはアレキサンドリアの孫にあたる存在なんですね。

米国系ブドウの「病気に強い」というタフさと、欧州系ブドウの「香り高い」という長所をハイブリッドさせた、まさに日本の育種技術の結晶と言えるでしょう。

豆知識: シャインマスカットがこれほど短期間で全国に普及したのは、栽培のしやすさが大きな理由です。アレキサンドリアが岡山県のガラス温室という限られた環境でしか本領を発揮できないのに対し、シャインマスカットは北海道から九州まで、日本全国の露地で栽培可能です。

香りの質と強さの決定的な差

私が両者を食べ比べたときに、最も衝撃を受けたのがこの「香り」の違いです。「マスカット」という名前は「Musk(麝香:じゃこう)」に由来する通り、香りが命の果物ですが、その方向性は大きく異なります。

マスカット・オブ・アレキサンドリアの香りは、一言で言えば「圧倒的な気品」です。口に入れる前から漂う強く濃厚なムスクの香りは、まるで高級な香水のよう。口に含んだ瞬間に鼻腔へと抜ける香りの爆発力と、飲み込んだ後まで長く続く余韻(フィニッシュ)は、他のどのブドウにも真似できない特徴です。リナロールやゲラニオールといった香り成分が絶妙なバランスで含まれており、ワイン好きの方なら「フルボディの白ワインのような複雑味」と表現したくなるでしょう。「果物の女王」という異名は、伊達ではありません。

対して、シャインマスカットの香りは「爽やかで親しみやすい」のが特徴です。もちろんマスカット特有の香りは持っていますが、アレキサンドリアに比べると軽快でフルーティー。親品種である「白南」や「甲斐路」由来の華やかさが混じり合っています。

ただ、ここで一つ知っておいてほしいポイントがあります。実はシャインマスカットは、糖度が高くなりすぎると香りが感じにくくなるという研究データがあるんです。最近の市場では「甘さ」が重視されるため、完熟させて糖度を極限まで上げることが多いのですが、そのぶん香りが控えめに感じられることもあります。アレキサンドリアのような「脳に刻まれるような香り」を期待すると、少し優しく感じるかもしれませんね。

味と甘さ・糖度の違い

次に「味」についてです。ここも好みがはっきりと分かれるポイントかなと思います。

シャインマスカットの最大の武器は、その「分かりやすい甘さ」です。糖度は平均して18度〜20度、高いものだとそれ以上になります。さらに重要なのが「酸味がほとんどない」ということ。酸味が少ないため、口に入れた瞬間にダイレクトに強烈な甘みを感じます。これが子供から大人まで、誰が食べても「甘くて美味しい!」と直感的に感じる理由ですね。最初の一口目からガツンとくるインパクト重視の味わいは、現代の嗜好に非常にマッチしています。

一方、マスカット・オブ・アレキサンドリアの味わいは「深みのあるバランス」にあります。糖度は16〜18度と十分に高いのですが、そこには適度な酸味も共存しています。この「酸味」こそが重要で、甘みに輪郭を与え、濃厚なのに後味をすっきりとさせてくれるんです。

単に甘いだけではなく、甘味と酸味が複雑に絡み合い、そこに芳醇な香りが重なることで、立体的な美味しさが生まれます。大人の味わいというか、食べ飽きない美味しさがあるのは間違いなくアレキサンドリアの方でしょう。「甘すぎるのはちょっと…」という方や、果物本来の酸味を楽しみたい方には、こちらが断然おすすめです。

皮や種の有無と食べやすさ

食べる際の「体験」そのものを変えているのが、皮と種の存在です。ここが両者のターゲット層を分けている最大の要因かもしれません。

シャインマスカットが革命的だったのは、「皮ごとサクサク食べられる」という点につきます。果皮が非常に薄く、果肉と一体化しているため、口に残る不快感が全くありません。噛んだ瞬間に「パリッ」「サクッ」と弾けるような食感(崩壊性肉質といいます)は、まるでスナック感覚。手が汚れず、ゴミも出ない。この「バリアフリーな食体験」は、忙しい現代人や、果物の皮を剥くのが面倒だという若年層に爆発的に受け入れられました。

それに対して、マスカット・オブ・アレキサンドリアは基本的に「皮を剥いて食べる」品種です。皮は厚みがあり、そのまま食べると口触りが悪く渋みも感じます。また、本来は「種あり」です。最近は技術的に種なしにすることも可能ですが、アレキサンドリア特有の高貴な香りと風味を最大限に引き出すために、あえて種ありで栽培されることが多いんです。

「皮を剥くなんて面倒くさい」と思われるかもしれませんが、アレキサンドリアの果肉は、皮を剥くと舌の上でとろけるような柔らかさ(溶質性肉質)を持っています。したたるような果汁と、とろける食感。手間をかけて皮を剥く時間そのものが、高級果物を愛でる「儀式」のような豊かな時間だと捉えることもできます。

食感のまとめ

  • シャインマスカット:パリッとした歯ごたえ。皮ごとパクパクいけるスナック感覚。
  • アレキサンドリア:とろけるような舌触り。ジューシーな果汁が溢れる伝統的な食感。

値段や価格相場の比較

気になるお値段ですが、ここにも明確な構造の違いがあります。スーパーやネット通販の相場を見ていると、ある傾向に気づくはずです。

まず、マスカット・オブ・アレキサンドリアは「高値安定」です。先ほど触れた通り、ガラス温室での徹底した環境管理が必要で、栽培には莫大なコストと手間がかかります。さらに生産地も限られているため、市場に出回る絶対数が少ないのです。贈答用ともなれば1房で5,000円以上は当たり前、最高級品なら1万円を超えることも珍しくありません。「安売り」されることは滅多になく、そのブランド価値は鉄壁です。

一方、シャインマスカットは「価格の幅が広い」のが特徴です。もちろん、岡山県産の「晴王(はれおう)」のような厳選されたブランド品は、アレキサンドリアに匹敵する、あるいはそれ以上の高値で取引されます。しかし、全国で栽培が拡大したことにより、スーパーでは1房1,000円〜2,000円程度の手頃な価格で購入できるものも増えてきました。

項目 マスカット・オブ・アレキサンドリア シャインマスカット
価格相場(贈答用) 1房 4,000円 〜 10,000円超 1房 3,000円 〜 10,000円
価格相場(家庭用) ほぼ流通なし(あっても高価) 1房 1,000円 〜 2,500円
価格の傾向 常に高級・高値安定 ピンからキリまで幅広い
主な用途 特別な贈答・お祝い 日常の贅沢・カジュアルギフト

こうして見ると、アレキサンドリアは「失敗できない特別な贈り物」としての地位を確立しており、シャインマスカットは「日常の贅沢から贈答まで幅広くカバーする万能選手」といった立ち位置にあることが分かります。

マスカットオブアレキサンドリアとシャインマスカットの違いと選び方

ここまで両者の植物学的な違いや味の傾向を見てきましたが、実際に購入するとなると「今の時期はどっちが美味しいの?」「この人にはどっちを贈るべき?」といった具体的な悩みが出てくるかと思います。

ここからは、シーズンや用途、そして購入後の扱い方という実践的な視点で、賢い選び方と楽しみ方を解説していきます。

旬の時期と出回り期間

果物はやはり「旬」に食べるのが一番美味しいものですが、この二つは美味しい時期が微妙にズレています。これを知っておくと、その時々でベストな選択ができるようになりますよ。

マスカット・オブ・アレキサンドリアの旬は、主に初夏から秋(5月〜11月頃)です。特にガラス温室で加温栽培されたものは5月頃から出回り始め、お中元のシーズンである7月〜8月に最盛期を迎えます。「夏のマスカット」というイメージが強いですね。お盆の帰省土産などに最適なタイミングです。

対してシャインマスカットの旬は、夏から晩秋(7月〜12月頃)です。露地栽培のものが増えるため、秋(9月〜10月)に最も流通量が増え、味が乗ってきます。アレキサンドリアよりも遅くまで出回っていることが多く、秋の味覚として楽しむならシャインマスカットの方が手に入りやすいでしょう。お歳暮の時期には少し遅いかもしれませんが、秋の彼岸やハロウィン、少し早いクリスマスパーティーなどにはぴったりです。

贈答用ギフトの選び方

誰かにプレゼントする際、どちらを選ぶべきか迷ったら「相手のライフスタイルや嗜好」を想像してみると答えが出やすいです。

マスカット・オブ・アレキサンドリアを贈るべき相手: 目上の方、食通の方、昔からの果物好きの方には、間違いなくこちらがおすすめです。「手間をかけて皮を剥き、香りを愛でる」という行為自体に価値を感じていただける世代には、最高級の敬意を表すギフトになります。「やはりマスカットといえばこれだね」と喜んでいただけるはずです。冠婚葬祭や特別なお祝い事など、格式を重んじるシーンにも適しています。

シャインマスカットを贈るべき相手: 小さなお子様がいるご家庭、忙しい共働きのご夫婦、若い世代の方には、シャインマスカットが喜ばれます。「洗ってすぐに食べられる」「ゴミが出ない」という機能性は、現代の家庭において最強のメリットです。また、酸味が苦手な方が多い場合も、ハズレのない甘さを持つシャインマスカットが無難でしょう。

日持ちさせる保存方法

せっかく高級なブドウを手に入れたのですから、最後の一粒まで美味しく食べ切りたいですよね。実は、ブドウの保存には「やってはいけないこと」と「やるべきこと」があります。両品種に共通する鮮度を保つ鉄則をご紹介します。

【絶対NG】食べる直前まで洗わないで! ブドウの皮についている白い粉は「農薬」ではありません。「ブルーム(果粉)」と呼ばれる天然の成分で、水分の蒸発を防ぎ、病気から実を守る保護膜の役割をしています。これを洗い流してしまうと、傷みが一気に加速します。洗うのは「食べる直前」が鉄則です。

冷蔵庫で保存する場合の最大のポイントは、「軸を少し残してカットする」ことです。

  1. 房のまま保存しない:房のままだと、軸(茎)が実から水分を奪ってしまい、シワシワになりやすくなります。
  2. ハサミを使う:手でちぎると皮が破れたり、軸の穴から果汁が漏れて酸化の原因になります。キッチンバサミを使い、軸を2〜3mm残して一粒ずつ丁寧に切り離しましょう。
  3. 乾燥対策:切り離した実を、キッチンペーパーを敷いた保存容器に重ならないように並べ、上からもペーパーを被せて蓋をします。

これを冷蔵庫の野菜室に入れれば、1週間程度は美味しい状態をキープできますよ。野菜室は冷えすぎず湿度も適度にあるため、ブドウの保存には最適なんです。

美味しい食べ方のポイント

最後に、それぞれのポテンシャルを最大限に引き出す食べ方のご提案です。

マスカット・オブ・アレキサンドリアは、「冷やしすぎない」のがコツです。食べる2〜3時間前に冷蔵庫に入れるくらいがベスト。冷えすぎると、せっかくの芳醇なムスク香が閉じてしまい、感じにくくなってしまいます。皮を綺麗に剥くには、軸と反対側(お尻の方)から剥くとスムーズですよ。その高貴な香りは、辛口の白ワインやシャンパンとのペアリングも最高です。

シャインマスカットは、しっかりと冷やして「皮ごとかぶりつく」のが基本ですが、少しアレンジするのも楽しいです。私がよくやるのが「冷凍保存」。軸から外して洗った実を冷凍庫に入れておくと、天然のアイスの実になります。半解凍の状態で食べると、シャリシャリとしたシャーベットのような食感になり、甘みが凝縮されてデザート感覚で楽しめます。ヨーグルトに入れたり、タルトのトッピングにしても、皮を剥く必要がないので変色しにくく、見栄えも抜群です。

マスカットオブアレキサンドリアとシャインマスカットの違いまとめ

ここまで見てきたように、マスカット・オブ・アレキサンドリアとシャインマスカットは、単なる新旧のライバル関係ではありません。

マスカット・オブ・アレキサンドリアは、手間暇かけて作られる芸術品であり、香りと余韻を楽しむ「大人の嗜好品」。その希少性と歴史的背景から、今後も聖域的な高級ギフトとしての座を譲ることはないでしょう。 シャインマスカットは、圧倒的な甘さと手軽さで果物の常識を変えた「革命児」。誰もが直感的に美味しいと感じるその味は、高級果物をより身近な存在にしてくれました。

「香りと伝統、そしてとろけるような余韻を贈りたいなら、マスカット・オブ・アレキサンドリアを」 「圧倒的な甘さと手軽さ、そしてパリッとした食感の驚きを楽しみたいなら、シャインマスカットを」

この違いを理解した上で選べば、あなたにとって、そして贈る相手にとって最高のブドウ体験ができるはずです。ぜひ、それぞれの個性を味わってみてくださいね。

(出典:農研機構『ブドウ新品種「シャインマスカット」を育成』

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