
大切にしていたプラスチック製品の一部が欠けてしまったとき、そのショックは計り知れません。私自身もお気に入りのガジェットや子供のおもちゃが欠けてしまい、途方に暮れた経験が何度もあります。
メーカーに修理を依頼したり、数千円もする専用の補修キットであるプラリペアなどを購入したりするのは、コスト面で躊躇してしまうことも多いのではないでしょうか。
そこで注目したいのが、ダイソーやセリアといった100均で手に入る材料を使った補修方法です。
エポキシパテやアクリル樹脂、さらには瞬間接着剤と重曹を組み合わせた驚きの裏技まで、100円ショップにはプラスチックの欠けを直すための素材が豊富に揃っています。
この記事では、それぞれの材料の特性や強度、具体的な手順について詳しく解説していきます。
- 100均のエポキシパテを使った高強度な穴埋め補修の具体的な手順
- ネイル用品のアクリルパウダーで高価なプラリペアの代用をする方法
- 瞬間接着剤と重曹を組み合わせた爆速硬化テクニックとその注意点
- 難接着素材であるポリプロピレンやポリエチレンへの正しい対処法
100均でプラスチックの欠けを補修する最適な材料

まずは、100円ショップで入手できる補修材料の中から、特に「欠け(体積の喪失)」を埋めるのに適したアイテムを厳選してご紹介します。
単に接着するだけでなく、無くなってしまった部分を「作る」ことができるマテリアルには、それぞれ向き不向きがあります。
ダイソーのエポキシパテで強力に穴埋めする方法
プラスチックの補修において、最も頼りになる存在と言えば、やはりダイソーで販売されている「万能エポキシパテ」です。これは100均DIY界隈ではもはや伝説的なアイテムと言っても過言ではありません。
このパテの最大の特徴は、粘土のように自由に形を作れる操作性と、硬化した後の岩のような硬度にあります。
エポキシパテは、基本的に「主剤」と「硬化剤」の2つの成分から成り立っています。
ダイソーの製品は、これらが金太郎飴のようなスティック状になっており、必要な分量をカッターで切り出して指で練り合わせるだけで、化学反応が始まり硬化するという非常に便利な仕組みになっています。
本来、工業用の補修材として使われるエポキシ樹脂が100円で手に入るコストパフォーマンスは圧倒的です。硬化後はカッターナイフで削るのが困難なほど硬くなり、ドリルでの穴あけやタッピング(ネジ切り)も可能になります。
具体的な使用手順ですが、まずは補修したい箇所の汚れや油分をしっかりと落とします。これを「脱脂」と言いますが、アルコール入りのウェットティッシュなどで拭くだけでも食いつきが全然違います。
次に、欠けた部分にパテがしっかりと食い込むよう、カッターやサンドペーパーで傷をつけておきます。これを「足付け」と呼び、ツルツルの面よりもザラザラの面の方が、物理的にパテが引っかかって剥がれにくくなるのです。
パテを切り出す際は、断面が均一になるようにスパッと垂直に切るのがコツです。そして、指先で色が均一になるまでよーく練ります。この時、少し温かくなってくるのを感じたら反応が始まっている合図です。
欠損部分に対して、少し「盛り気味」にパテを押し付けるのがポイントです。硬化すると少し縮むこともあるのと、後で削って形を整えるため、実際の形状よりも大きく盛っておく必要があるからです。
ダイソーの「速硬タイプ」は約1分で硬化が始まるとパッケージにありますが、実際には夏場なら数分、冬場ならもう少し余裕があります。完全にカチカチになるには1時間程度、できれば24時間放置するのが理想的です。完全に固まるとグレーの石のようになりますので、あとはヤスリで整形していけば、失われたパーツが復活します。
セリアのグッズを使ったパテ埋めの基本的なやり方
ダイソーだけでなく、セリアもまたDIY好きにはたまらない素材の宝庫です。特にセリアで注目したいのは、「プラスチック用」と銘打たれたパテや補修材のラインナップです。ダイソーの万能パテが「とにかく硬く、何でも埋める」という剛腕タイプだとすれば、セリアで見かけるプラスチック用パテは、もう少し繊細な「仕上げやすさ」に配慮された製品が多い印象です。
プラスチックの補修で一番困るのが、実は「パテが硬すぎること」なんです。母材(元のプラスチック)よりも補修材の方が硬いと、ヤスリがけをした時に、柔らかい母材の方ばかりが削れてしまい、いつまで経っても平らにならないという現象が起きます。セリアなどで手に入るプラスチック用のエポキシパテは、硬化後の硬さが一般的なABS樹脂などに近く調整されているものがあり、サクサクと削れて非常に成形がしやすいのです。
基本的な使い方はダイソーのものと同じですが、セリアにはヘラやサンドペーパーといった周辺グッズも充実しています。パテを埋める際に、指だけでなく、100均の粘土細工用のヘラを使うと、隙間の奥までしっかりと充填でき、また表面をある程度ならすことができます。これにより、硬化後の削り作業の労力を大幅に減らすことができます。
パテはどうしても少し余ってしまいますが、捨てずに小さく丸めて手元に置いておきましょう。これを「捨てパテ」と呼び、これを触ることで、補修箇所のパテが今どれくらい固まっているかを確認する目安になります。本体を触って指紋をつけてしまう失敗を防げますよ。
アクリルリキッドでプラリペアの代用をする手順
ネットで「プラスチック 補修」と検索すると必ず出てくる最強ツール「プラリペア」。魔法の粉と液体でプラスチックを同化させる素晴らしい製品ですが、唯一の欠点はその価格です。しかし、実は100円ショップの「ネイル用品コーナー」にある材料を使えば、このプラリペアに近い補修を行うことが可能です。これがいわゆる「疑似プラリペア」と呼ばれる手法です。
用意するのは、セリアやキャンドゥなどのネイルコーナーにある「アクリルパウダー」と、それを溶かすための「アクリルリキッド」です。もし専用のリキッドが手に入らない場合は、アクリル樹脂用の接着剤でも代用できることがありますが、操作性は少し落ちます。
仕組みとしては、アクリルパウダー(粉)にリキッド(液)を混ぜると、化学反応でドロドロのゲル状になり、数分でカチカチのアクリル樹脂の塊になるというものです。本家のプラリペアは母材を溶かして溶着する効果が強いですが、100均アクリルの場合は「隙間を埋めてガッチリ食いつく」というイメージに近いです。
具体的な手順としては、まず小皿(これも100均でOK)に少量のリキッドを出し、筆に含ませてからパウダーに触れると、筆先に小さな樹脂の玉ができます。これを欠けた部分に乗せていく「ニードル法」が有名ですが、慣れないと難しいです。初心者におすすめなのは、最初から別の容器で粉と液を混ぜてペースト状にし、それを欠損箇所に盛り付ける方法です。
このアクリル樹脂による補修の最大のメリットは、エポキシパテよりもキメが細かく、小さな欠けや薄いパーツの再生に向いていることです。硬化後は非常に硬く透明感(クリアパウダーを使った場合)もあるため、見た目も美しく仕上がります。ただし、ネイルコーナーに40代男性が一人で立ち入るには少し勇気が必要かもしれませんね。
瞬間接着剤と重曹を使う裏技の強度と危険性
次にご紹介するのは、まさに「科学実験」のような裏技です。どこの家庭にもある「瞬間接着剤」と、掃除や料理に使う「重曹」を組み合わせる方法です。通常、瞬間接着剤は液状で、隙間を埋める能力はありません。しかし、重曹をフィラー(充填材)として使うことで、一瞬にして岩のように固まるパテに変身するのです。
やり方は非常にシンプルですが、スピード勝負です。 まず、欠けた部分に重曹の粉を山盛りにします。そして、その上から低粘度の瞬間接着剤(サラサラしたタイプ)を垂らします。すると、液体が粉に染み込んだ瞬間に「ジュッ」という音とともに、一瞬で硬化します。これを繰り返すことで、大きな欠損も短時間で埋めることができます。
この反応は「化学反応」であり、急激な発熱を伴います。場合によっては煙が出るほど高温になり、触れると火傷をする危険があります。また、目や鼻を刺激するガスが発生することもあるため、必ず換気をし、顔を近づけすぎないようにしてください。ティッシュで拭き取るのも発熱の原因になるので厳禁です。
この方法で作られた補修箇所は、アクリル樹脂並みにカチカチになります。ヤスリがけも可能ですが、非常に硬いため、金属用のヤスリが必要になることもあります。「とにかく今すぐ直したい」「乾くのを待っていられない」という緊急時の補修としては最強の方法と言えるでしょう。ただし、見た目は白くザラザラになるため、表面の美しさを求める場所には不向きです。
ヤスリがけと塗装で直した跡を目立たなくする
パテやアクリルで穴を埋めただけでは、補修はまだ50点です。ここからいかに「直したことが分からないようにするか」が、腕の見せ所です。100円ショップには、仕上げに使える研磨ツールも充実しています。
まずは形を整える工程です。カッターナイフでおおまかな形を削り出したら、耐水ペーパーやサンドペーパーを使います。番手(粗さ)の数字が小さいほど目が粗く、大きいほど細かくなります。いきなり細かいヤスリを使うとなかなか削れないので、まずは#400くらいの粗目でガシガシと削り、面を平らにします(面出し)。指で触って段差を感じなくなったら、#800、#1000と番手を上げていき、表面の傷を消していきます。
特にネイル用の「爪磨き(バッファー)」は非常に優秀です。スティック状で持ちやすく、粗目から仕上げ用までセットになっているものが多いため、曲面の研磨には最適です。これで磨くだけでもかなりツルツルになります。
最後は塗装です。エポキシパテはグレーや白になるため、そのままだと目立ちます。100均のアクリル絵の具やスプレー塗料を使って色を合わせましょう。完璧に同じ色を作るのは難しいですが、近似色で塗り、最後にクリアースプレーで全体をコーティングすることで、光沢が統一されて補修跡が驚くほど目立たなくなります。
100均のプラスチック欠け補修で失敗しない応用術

基本的な材料の使い方が分かったところで、次はもう少し難易度の高いケースや、素材による落とし穴について解説します。これを知っておくと、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。
UVレジンとおゆまるで透明パーツを復元する技術
車のウィンカーレンズや、フィギュアのクリアパーツ、あるいは透明な収納ケースの角などが欠けてしまった場合、不透明なパテで埋めると見た目が台無しになってしまいます。そこで活躍するのが、セリアやダイソーのハンドメイドコーナーにある「UVレジン」と「おゆまる(型取り用樹脂)」です。
UVレジンは紫外線で固まる透明な樹脂です。これ単体では流れ落ちてしまいますが、「型」があれば欠けた部分をそのままの形で復元できます。ここで使うのが「おゆまる」です。お湯で温めると柔らかくなるプラスチック粘土のようなもので、これを正常な部分(例えば左右対称の反対側のパーツなど)に押し付けて型を取ります。
冷えて固まったおゆまるの型を欠損部分にあてがい、そこにUVレジン液を流し込みます。あとは太陽光に当てるか、100均でも売っているUVライト(マジックライトペンなど)を照射すれば、数分で透明なパーツが再生されます。
UVレジンは硬化後にヤスリがけをすると白く曇ってしまいます。しかし、コンパウンド(研磨剤)で磨くか、最後に薄くもう一度レジンを塗って硬化させることで、ガラスのような透明度を取り戻すことができます。
ポリプロピレンなどつかない素材への対応と限界
100均補修で最も多くの人が陥る失敗、それが「素材の相性」です。特にタッパー、衣装ケース、バケツ、自動車の内装パーツなどに使われている「ポリプロピレン(PP)」や「ポリエチレン(PE)」という素材は、非常に厄介です。
これらの素材は表面がツルツルしており、化学的に非常に安定しているため、エポキシパテや瞬間接着剤、UVレジンなどが一切くっつきません。一度はくっついたように見えても、軽く爪で弾いただけで「ポロリ」と取れてしまいます。これは「難接着素材」と呼ばれ、プロでも接着に苦労する相手です。
残念ながら、100均の材料だけでPP/PEの「欠け(穴埋め)」を構造的に完全に修復するのは、ほぼ不可能です。唯一対応できる可能性があるのは、コニシ株式会社製の「Gクリヤー」のようなゴム系接着剤を使った「接着」ですが、これは乾燥するとゴム状になるため、ヤスリがけができず、欠けを埋めるパテとしては機能しません。
| 素材 | 特徴 | 100均パテの可否 |
|---|---|---|
| ABS樹脂 | 硬く一般的。おもちゃ等 | ◎(非常に良くつく) |
| スチロール | 透明で硬い。CDケース等 | ○(アクリル系推奨) |
| ポリプロピレン(PP) | 半透明で柔軟。タッパー等 | ×(剥がれる) |
| ポリエチレン(PE) | 柔らかい。ポリ袋、ボトル | ×(剥がれる) |
もし対象物がPPやPEだった場合、100均素材での綺麗な成形補修は諦め、見た目は悪くなりますが、はんだごてで同素材を溶かして埋める「溶着」などの荒療治が必要になることを覚えておいてください。
角の欠けにはペースト状の補修材がおすすめ
プラスチック製品で最も欠けやすいのが「角(コーナー)」です。角が欠けると、エポキシパテのような粘土状のものでは、押し付けても形を保つのが難しく、ボロボロと崩れてしまいがちです。
このような「角」の再生には、先ほど紹介したアクリル樹脂(疑似プラリペア)や、重曹+瞬間接着剤のような「ペースト状」から固まる材料が適しています。マスキングテープやセロハンテープで壁を作り、そこに流し込むようにして充填することで、鋭いエッジ(角)を綺麗に出すことができます。
特にアクリル樹脂は、重力に従ってある程度自己水平化(レベリング)するため、滑らかな表面を作りやすいのもメリットです。角が綺麗に再生できると、補修の満足度は格段に上がります。
作業時の換気や手袋など安全面での重要な注意点
最後に、安全面について触れておきたいと思います。100円ショップで手軽に買えるとはいえ、今回紹介した材料はすべて本格的な「工業用化学物質」です。
エポキシパテや瞬間接着剤、アクリルリキッドは、特有の揮発成分を含んでおり、吸い込むと気分が悪くなることがあります。作業中は必ず窓を開けて換気を良くしてください。また、硬化前の樹脂は皮膚に付着すると「感作性(アレルギー)」を引き起こす可能性があります。一度アレルギーになると、二度とその物質を扱えなくなってしまいます。
ですので、作業時は必ず100均で売っている「ポリエチレン手袋」や「ニトリル手袋」を着用しましょう。特に瞬間接着剤を使う際は、軍手のような布製の手袋は厳禁です(染み込んで発熱するため)。自分の体を守りながら、楽しくDIYを行うことが何よりも大切です。
- 必ず換気の良い場所で行う
- 素手厳禁!ビニール手袋などを着用する
- ペットや小さなお子様が近づかない環境を作る
100均でプラスチックの欠けを補修する総まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「プラスチック 欠け 補修 100 均」をテーマに、エポキシパテから裏技的な手法までを網羅的に解説してきました。100円ショップのアイテムは日々進化しており、使い方と素材の特性さえ理解していれば、数千円する専用キットにも負けないクオリティで修理を行うことが十分に可能です。
大きな穴にはダイソーのエポキシパテ、繊細な修復にはセリアのネイル用アクリル、スピード重視なら重曹と瞬間接着剤、といったように適材適所で使い分けるのが成功の秘訣です。ただし、PPやPEといった難接着素材には限界があることも忘れてはいけません。まずは直したいものの素材を確認し、小さくテストしてから本番の補修に挑んでみてください。自分で直した道具には、今まで以上の愛着が湧くはずですよ。